太郎山北面〜山王帽子山 H17.6.12


この日は好天なら栗山村側から帝釈山〜女峰山と歩くべく計画していましたが、梅雨に入り、金曜日の天気予報も土日通じて曇り。
計画変更して土曜日に発光山〜横根山〜古峰原山を歩きました。そしてこの日は家でゆっくりしているつもりでしたが、朝起きてみると、何と抜けるような青空・・・天気予報を恨みました。

この時期、快晴はあまりないことなので、急遽、太郎山〜山王帽子山を歩きました。
ただ、山王峠からのコースにしろ、新薙コースにしろ、人出が多そうだったので、誰も登ることはないであろう太郎山の北面を攀じ登りました。終始、予想以上のヤブ斜面で苦労しましたが、どうにか登ってきました。
熊野沢林道入口9:25---枝尾根取付き9:52-------太郎山13:55/14:20---小太郎山14:37/14:50---鞍部15:35---山王帽子山15:48---山王峠16:25---
熊野沢林道入口16:50


@ いろは坂を登り、戦場ヶ原を過ぎて、光徳牧場方面に入る。
直進して綺麗な舗装路の山王林道を山王峠に登ってさらに直進する。
道路は急カーブを描いて下り始める。
その急カーブのコーナー部から東へ延びる林道がある。
ここが熊野沢林道の入口(@)になるが、ゲートが閉まっていて車は進入できない(A)。
ここに駐車して砂利の林道歩きとなる。

太郎山の北面を登るにあたり、どこから取り付こうか以前からあれこれ考えていた。
地形図を見ると、まず目に付くのは太郎山から北西に延びる尾根である。
ただ、この尾根はどう考えても岩稜であった。

その北東の、堰堤が沢山ある谷の向こうの尾根だと距離が長くなるが、こちらはどうにか登れそうな気がした。
ただ、北面なので、赤薙山南尾根のようなミヤコザサの爽快な尾根は期待できない。ヤブは覚悟しなくてはならないだろうとは思っていた。
それでも、取り付くならこの尾根しかない。

熊野沢林道はかなり工事に入る車が多いようで、轍が規則正しく付いている。

太郎山の北西尾根の全貌が視界に入った。
とても登れそうにない岩尾根だ。この時点で、心の奥にあった「ひょっとしたらここを辿れるかもしれない」という淡い期待は消えた。

作業道を右に分けてさらに進むと、、工事会社のコンテナハウスがあったり、索道が架けられたりしている。

この索道のある谷から先は、地形図では幅員が狭くなっているが、実際には変わらず道は続いている。

ゆっくり30分ほど歩いて尾根に取り付くが、そこは背丈まであるクマザサの密藪であった(B)。
小さな虫もブンブン飛んでいる。いきなり気力が萎えそうになった。

ここで撤退してはあまりに情けないのでとにかくヤブに突入。
50mほど登って笹藪はおとなしくなる。
これでピッチを上げられると思ったのもつかの間、今度は進入を阻むほどのシャクナゲの密藪となる(C)。
このあたりから急斜面となってきて、丹念にシャクナゲを掻き分けて進むが、少し掻き分けるとその先も視界が利かぬほどのシャクナゲ地獄。

少しでも進みやすい進路を選び、気合を入れて前進する。
コンパスをたびたび確認したが、進路は南東から東に変わってきている。
方角は間違っていないようだ。

シャクナゲ藪は突然切れ間もあり、そのたびにひと息つく。
進路が東から再び南東に変わってくる直前が一番の急斜面となるが、このあたりになるとコメツガが混ざりだした(D)。
コメツガはシャクナゲよりは漕ぎやすいが、花粉の飛散が凄い。
マスクを持参してくるべきであった。

登りがひと段落するたびに先を見通してみるが、綺麗に先々まで咲いているシャクナゲを見るたびに気が重くなる。

しばらくは尾根上を歩いている感覚はあったのだが、いつしか単なる斜面を登っているように感じられた。
恐らく、山頂まで2/3ほど登り、尾根が消滅したあたりを登っているのだろうと見当をつける。ここからは意識的に真南に登っていく。

なおもヤブとの格闘は続く。
北西尾根とは違い、大岩はほとんどないが、1ヶ所だけ大岩にブチ当たる。
ところが、左右どちらもシャクナゲが密生してよけることができない。
仕方なく岩の割れ目をつかんで直登して越えた。

取り付きから3時間ほど経過した頃、北西尾根にブチ当たった(E)。
南西は転落したらまず助からない深い谷である。

先に見える太郎山は、まだ頂を見ることができない。
またも気力が萎えそうになるが、今さら引き返すことはできない。
天気はいいし、少しずつ詰めていけばよいのだと気を取り直す。
昼食は山頂まで待とうと考えていたが、あきらめてここで食べた。

北西尾根もコメツガ・シャクナゲが交互に密生していたが、わずかに尾根を外れると多少は登りやすくなった。
尾根上にヤブが少ないところではすかさず尾根に復帰して山頂までの距離を図ってみるものの、やはり小太郎山までしか見通すことができない。

足より腕のほうが疲れてきた。
高度面では、あと100mは切るところまで登ってきただろうと思った頃、残雪が現れ始めた。まさに救いの神と思えた。
尾根筋には雪はないが、わずかに尾根を外れると雪があって背の低いコメツガを隠していた。アイゼンを必要とするレベルではないのでその上を歩いた。
時々足元を滑らせたが、ヤブのことを考えたらずっとマシである。

ようやく、太郎山の頂が視界に入ってきた(F)。
もう眼の前であった。
俄然、気力が沸いてくる。
既に、取り付きから4時間が経過しようとしていた。
少々時間オーバーだが、まだ問題はない。

結局、山頂直下までコメツガ・シャクナゲに付き合わされ山頂に到達した(G)。

山頂には、団体パーティーが団欒中であった。
北のヤブから突然出てきた私を好奇の目で見ているようであった。

山頂に辿り着いた途端に曇ってしまうのではないかと心配していたのだが、どうやら持ちこたえてくれた。
女峰も帝釈も男体も奥白根方面も綺麗に見渡せた。

団体パーティーが下山した後、山頂を偵察した。
北西尾根を見下ろしてみたが、2100mあたりから下は、やはり人が歩けるような尾根ではなかった。

ここからは踏跡のハッキリした道なので妙に安心感を覚えた。
登りは挑戦的なルートでもいいが、下りはあまり欲を出さないほうがよいと感じた。

山頂直下ですぐに新薙コースを分ける(H)と、南東の眼下に花畑が眼に入るが、ここから見下ろす限りは単なる広場に見えた。

その後少し急降下して、鞍部から岩を巻くように登ると剣ヶ峰である。
山名板が1枚あるが、標高の表示はない(I)。

すぐ先には、小太郎山の山頂が見える。
剣ヶ峰から少し登ると丸い山頂の小太郎山に着く(J)。

ここからの眺めは、本家の太郎山を凌ぐ絶景で、思わず見とれてしまう。
周囲の山々はことごとく一望でき、眼下には光徳方面がキラキラ光っている。
このような美しい光景は、今まで見たことがない。
いつか、再び訪れたいと思った。

ここから先は、長い長い下りとなる。
特に難しいところもなく、明瞭な道をグングン下る。

やがて、光徳へ谷沿いを直接下る道との分岐点になるが、ここは通行禁止の看板があり、封鎖されている(K)。
踏跡も草に隠されており、掟を破って歩く人はいないようだ。
谷沿いの道というのは、無事な状態が長続きすることは少ないであろう。

下りに飽き飽きしてくる頃、ようやく山王帽子山への鞍部に到達する。
太郎山で会った団体さんとは違うパーティーが、座り込んで休憩中であった。
ひと声だけかけて通過する。

山王帽子山への登り返しは、笹の中をジグザグに道が付いている。
太郎山北面の登りと比べたら天国である。
その喜びを感じてどんどん歩が進む。

着いた山王帽子山は、広いものの、展望の利かない平凡な山頂であった(L)。
写真だけ撮って、休まずに通過。

ここからは、本当は北へ派生する尾根を下るつもりだったのだが、時間がないので取りやめて、山王峠へ普通のコースを下ることにした。

地形図ではなかなの急斜面になっているが、ジグザグに踏跡がついており、特に問題はない。
山王林道に出る直前で、笹が密生して踏跡を隠すようになるが、それでも進路を見失うほどではなく、山王帽子山から30分ほどで山王林道に下り立った(M)。

あとはわずかに林道を上がって山王峠。
峠からは於呂倶羅山の大きな山容を眺めながらさらに北進し、急カーブを下って熊野沢林道入口に戻った。

今回の太郎山北面は、高薙山のヤブのイメージを描くことができた点で、収穫があった。そしてそれよりも、強く印象に残ったのは小太郎山からの絶景であった。

A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
L
M


【ルートマップ】






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